ここ最近の数年間で、コンセプトカフェというビジネスモデルはすっかり市民権を獲得した印象があります。
以前は一部の先鋭的なマニア層やオタクが自己を開放できる居場所として機能していたコンセプトカフェも、今ではごく普通のサラリーマンや若いカップルが目立つように。
話のネタ作りのために興味本位で行く場合もありますし、また、一昔前のクローズな雰囲気とは違い「キャストが映りこまなければ撮影OK」という店舗も増えてきたので、インスタ映えスポットとしても利用されるようになりました。
ですが、店舗数が右肩上がりに増える一方で、コンセプトカフェの収益効率の良さに気付いた水商売関係の企業の参入も目立ってきており、カフェとは名ばかりのガールズバー的な料金体系の店舗を構えてオタクの財布を狙うという世知辛い商売がはびこっている、という残念な状況でもあります。
そこで、読者の皆様が少しでもリーズナブルな価格で楽しくコンセプトカフェを利用できるように、覚えておいて損のない業界の基礎知識はもちろん、良質な店舗を見分けるコツも紹介していきたいと思います。
目次
コンセプトカフェの定義
「コンセプトカフェ」とはどのような飲食店を指す言葉なのか。特に、どこからどこまでをコンセプトカフェに含めるのかという厳密な線引きに関しては、実際に業界で長年働いているスタッフや経営者達の間でも意見の分かれることろです。
コンセプトカフェは通常、「コンカフェ」と略されます。ですので、この記事では以降コンカフェと表記します。コンカフェという略称がいつから定着するようになったのかは定かではありません。
私自身が初めてこのワードを耳にしたのは確か2014年の秋頃だったと記憶しています。その当時通っていたメイドカフェのオーナーにインタビューをさせていただく機会があったのですが、「うちは他のメイドカフェみたいに接客もちゃんとしてないし世界観も固まってないから、コンカフェじゃなくてガールズバーですよ」と自虐的なニュアンスで語っていて、恥ずかしながらコンカフェの意味をよく知らなかった私は、その場では適当に相槌を打っておいて、帰宅後急いでネット検索しました(笑)。
要するに「メイドカフェを含む、アニメ・ゲーム・コスプレなど何らかのオタク趣味的コンセプトに沿った内装や接客スタイルで運営されているカフェ」をコンセプトカフェ、いわゆるコンカフェと呼んでいるのだということをそこで初めて知ったのです。
一般的には上記のような説明でほぼコンカフェというものを定義付けられると思って間違いありません。
コンセプトカフェの微妙な食い違いの原因
ではなぜコンカフェかそうじゃないかの線引きにおいて微妙な食い違いが生じるのでしょうか。
その最も大きな原因としては、「萌え要素のない」オタク趣味のカフェをコンカフェに含めるかどうかという問題が常につきまとうからです。
先ほどの定義要件のなかに「メイドカフェはコンカフェに含まれる」とありましたが、コンカフェの8割はメイドカフェです。
そもそもオタク的趣味の大半がアニメやアイドルなどの「萌え」成分の強いジャンルですので、自動的にメイドなどのコスプレをしたキャストが接客をするというシステムに落ち着きます。
そのうち、他のメイドカフェと差別化を図るために、メイド服ではなくアニメキャラのコスプレやセーラー服、体操服やスク水などで接客をするカフェも誕生しました。
ですが、クラシカルで落ち着いた雰囲気のメイドカフェが好きなファンにとっては、JKの格好でキャピキャピした接客をするようなお店をメイドカフェと一緒にするな!と納得のいかない心情があったのも事実です。
そこで、メイドカフェの概念を「可愛い子がオタク相手にオタク的な会話で盛り上げて接客する店」という広い範囲にまで拡張した結果、コンカフェという名称が普及するようになった。
これが今のところ有力な説となっています(まあ、ほぼこれが正解でしょう)。
コンセプトカフェの定義の変遷
ただ、この定義付けが、伝言ゲームの要領で「可愛い女の子とアニメの話ができる店」→「男女問わずオタクが集まる店」→「とりあえずカウンターやテーブルにオタク的なグッズが飾ってある店」→「とにかくなんか変わった店」と、経営者側の都合でどんどん拡大解釈されていきました。
そのプロセスを経るうちに、執事コスプレのイケメン男性キャストが女性相手に接客する店などもコンカフェに分類されるようになり、更には鉄道模型やプラモデルを眺めながらお茶を飲むだけのカフェ、ハリネズミカフェやカワウソカフェに代表される小動物系カフェまでコンカフェに含めようとする考え方もマジョリティーになりつつある状況なのです。
こうなると、もはやスタッフが女性である必要もないし、もっと言うならスタッフが受付にしかおらず一切接客をしない場合もあります。
「コンカフェの定義」の説明にかなりのボリュームを費やしましたが、ここが結構大事なところで、言葉の成り立ちや世間に認知される経緯を知っておかないと、サラリーマンが得意先の会社の人から「コンカフェっていうのが流行ってるらしいから連れてってよ!」と頼まれて接待する時に、間違って「男性のバーテンが1人でカウンターに立ってる、アニメ好きが集まるだけのバー」みたいなお店を案内してしまう可能性もあるわけです(笑)。
ですので、同じコンカフェと言っても一般的なイメージに近い正統派メイドカフェと単なるサブカル系カフェとでは雲泥の差があるということはまず何よりも肝に銘じておいていただければと思います。
コンセプトカフェとガールズバー・スナックの違い
オタク的な会話ができるかどうかではない
コンセプトカフェ(コンカフェ)に全く興味のない人からすれば、「何が楽しくてコンカフェに通ってるの?」と疑問に思うかもしれません。
一般の男性が「今日は可愛い女の子がいるお店で飲むぞ!」となった場合、まず候補に浮かぶのはガールズバーやスナックの類だと思います。
(キャバクラなどの、女性が横に座るタイプの店舗は営業許可の種類からして異なるのでこの記事では触れないでおきます)
ネオンがきらめく繁華街で、綺麗な女性と会話を楽しみながら飲むお酒は、仕事の疲れも癒されますし最高です。
ところで、オタクがコンカフェに足繁く通うのは「可愛いメイドさんとアニメやゲームの話ができるから」というのが主目的ですね。
では、ガールズバーの店員さんやキャバ嬢とはオタク的な会話はできないのでしょうか?
実はこれがかなり難しいところで、今のご時世、オタクじゃなくてもアニメやゲーム、アイドルに関して相当深い知識を有している女性が増えています。
実際、私が以前通っていたガールズバーで一番仲の良かった子はお店で稼いだお金を全てソシャゲの課金に注ぎ込んでいましたし、別の子は人気アイドルのCDを毎回何十万円分も購入し、土日の昼間は必ず握手会に参加してから出勤するという生粋のアイドルオタクでした。
また、オジサンが通うような場末のカラオケスナックで働いているような子でも、昔は客層にあわせて演歌を歌っていたのが、今ではボカロの最新曲、水樹奈々やLiSAのアニソンなどを堂々と歌っている光景をよく見かけるようになりました。
コンセプトカフェは面接の時点でアニメやゲームに詳しいかを聞かれるのでそのジャンルに特化した子が集まるのは確かですが、スナックだろうがガールズバーだろうが「女性が男性をもてなす飲食店」には必ずオタク女子のキャストが一人は在籍しているのです。
もちろんコンカフェのほうはキャストのほぼ全員がオタクなので、誰とお喋りしても話が弾む確率が高いでしょう。
ならば、コンカフェとスナック・ガールズバーとの違いは確率的な問題だけなのでしょうか?
私が考える「コンカフェとガールズバーの決定的な違い」をひとつ挙げるとするならば、それはちょっとメタ的な理論になるのですが、
「コンカフェではコンカフェの話題ができる」
ということです。
コンカフェの話題ができるとは
これはどういうことかというと、ガールズバーやスナックで働いている女の子は、他の同業店舗の情報をほとんど知りません。まず、客としてそこに行くことがないからです。
一方、メイドカフェやコンカフェは違う店舗同士のキャストでも比較的仲が良い場合が多いですし、お互いの店舗にも普通に遊びに行きます。
心理としては、地下アイドルがメジャーアイドルのライブやイベントに一般の観客として参加するという行動に近いものがあると思います。コンカフェで働いている子のなかには自分自身が元々メイドカフェに通っている側だった、というケースも多く、業界に入ったきっかけも「メイド服に憧れて」「自分も可愛いメイドさんと一緒に働きたい」となどの理由が上位を占める傾向にあります。
(ちなみに、地下アイドルとメイドを兼業している女の子も大勢いますが、地下アイドルとメイドは同じ「三次元の萌え」という意味で相性の高いジャンルと言えます)
ですので、コンカフェで女の子と会話するときに「この間、あそこのコンカフェに行ったよ!」というネタを織り込めば、「別の店の話なんかしないでください!」とはならず、「そうなんですね!私も好きでよく行ってます!金曜日に入ってるショートボブの子、可愛いですよね!」と盛り上がって親密度がアップすること間違いなしです。
特に、飲食店というのはどこも営業時間が被りがちのため、いくらコンカフェ同士で交流があるといっても、キャストはそこまで頻繁に他の店に通うことはできません。憧れている先輩メイドさんの生誕イベントなどに顔を出したくても、シフトが重なっていると諦めざるを得ないわけです。
そんな時に、お店をハシゴして「さっき、君が好きなメイドさんの生誕イベントに行ってきたよ!」と報告してあげれば、「え!いいなー!お客さんいっぱい来てました?どんな衣裳でした?」と目を輝かせて食いついてくれるはずです。
メイドさんとの距離を縮めたいとき、様々なバリエーションのアプローチが存在するのですが、なぜこの方法をオススメするかというと、「特にアニメやゲームに興味があるわけじゃないけど、とりあえず若くて可愛いメイドさんとの共通の話題がほしい!」という人がストレートな欲求を満たすためには最も有効な話題のネタだからです(笑)。
お気に入りのメイドカフェに昔から通い詰めている古参の常連客は、推しのメイドさんが好きなアニメやゲームを知り尽くしています。この記事を読んでいる皆様は決して年季の入ったオタクと同じ土俵で勝負せず、ちょっと違う角度からメイドさんとの心の距離を縮めていくのが良い結果をもたらすことになると確信しています。
失敗しないコンカフェの選び方
店内の様子が外から見える店は安心!
土地勘の薄いエリアでコンカフェやメイドカフェを探すとき、一番怖いのは「ぼったくり」被害に遭うことです。高いお金を払って外れクジを引かされる事態だけは避けたいですよね。
明朗会計を厳守しているコンセプトカフェは当然良い評判が広まりますし、お客さんもそういう安心できる店舗に集まります。
大阪・日本橋の「e-maid」というメイドカフェは元々普通の喫茶店だったのですが、日本橋エリアが電気屋街からオタクの街へと移り変わりつつある黎明期の頃にいち早くメイドカフェへと業態チェンジしました。路面立地で外から中の様子が伺えます。
長年に渡って正統派メイドカフェのスタンスを貫いており、メイドさんの衣裳もクラシカルなロングスカートタイプ。店内は常にお客さんで賑わっています。
創業時の喫茶店のシステムをそのまま踏襲しているのでチャージもありません。こういうお店ならコンカフェ初心者はもちろん、カップルやファミリーでも安心して入店できます。
呼び込みチラシはもらってから一旦その場を離れるべし
反対に、外から店内の様子が見えるけど客席はガラガラ、というコンカフェも少なからず存在します。
この手のお店に関しては、
・単純にぼったくり店
・オープン時間直後だから
・新規店舗なのでまだ知られていない
など、様々なパターンが予想されます。このあたりの見分け方はコンカフェ上級者でも100%正しく判断できなかったりするので油断できません。
特に危険なのが、客席がガラガラな店舗の店先で呼び込みをしている場合です。
生身の可愛い女の子に直接話しかけられて、しかも他にお客さんもいないとなれば、「今ならこの子を独占できるのでは?!」という誘惑に駆られがちです。
しかし、そういう時こそ客観的な判断力をキープする冷静さが問われるところであります。
とりあえずキャストさんが配っているお店のチラシだけ1枚貰っておき、「検討します」と言って速やかにその場を離れ、5分ほど歩いた場所でチラシを熟読し、料金システムを確認しましょう。
法外な時間制チャージやサービス料を徴収されないことが確認でき次第、そこで改めて入店すればよいのです。何事も焦りは禁物です!
ごくたまに「実はこれが最後の1枚のチラシなので渡せないんです。
中に入っていただければ料金システム説明しますので」という切り口で店内に引き込もうとするキャストが入るのですが、これなどは論外です(笑)。
仮にそれが嘘じゃなかったとしても、余裕を持たせた枚数だけチラシを印刷できないような経営状態の店には最初から近付かないほうが無難であると言えるでしょう。
キャストさんがSNSでシャンパンの写真をアップしていたら超危険サイン!
たいがいのコンカフェキャストはお客さんを確保するための営業活動の一環としてSNSアカウントを持っています。
そこでありがちなのが、夜中頃の時間帯に、
「今日の出勤も無事終了しました!差し入れしてくれた方、ドリンクごちそうしてくれた方、シャンパンあけていただいた方、ありがとうございました!」
のような文章と共に、空になったシャンパンの瓶を並べて撮った写真をアップしているキャストです。
こういうタイプのキャストが在籍しているコンカフェは危険度MAXです。
理由は言うまでもなく、その店舗自体、「シャンパンを注文することが当たり前」のノリに染まってしまっているからです。
関西だと、日本橋のようなオタク街から少し距離のある宗右衛門町やウラナンバあたり、繁華街の雑居ビルに店を構えるメイドバーにこういうノリが非常に多いです。
大人の街である宗右衛門町などは場所柄、同じビルに入居している他の飲み屋がシャンパン売上で経営が成り立っていたりするので、どうしても感覚が麻痺してしまうというのもありますが。
キャストが「シャンパンおごられ慣れ」してるようなコンカフェで普通にビール2杯ほど飲んでドリンクもごちそうせずに帰ったりすると、よほど若くてイケメンの客でもない限り、後でキャスト達から陰口を叩かれます(笑)。
悲しいかな、シャンパン特需で業務規模を拡大していくコンカフェが主流になってきているのが現状ですので、普通に良心的な店舗で可愛い子とお喋りしてリーズナブルな料金で済ます、という消費者としてごく当たり前の願いすらなかなか叶えられなくなっていますが、極度にメイドさんがドリンクをねだってくるような店舗を避けることは事前調査によって十分可能ですので、少しでも気になったコンカフェがあったら、お店に行く前にキャストのSNSアカウントの内容をチェックしてみることを強く推奨します。
ただしこの「SNSシャンパンチェック作戦」は、コンカフェ上級者が安く遊ぶために使うとっておきの裏技なので、あまり他人には教えないでください(笑)。
まとめ
コンセプトカフェに関しての、入門編の更にエントランスというレベルの基礎的な知識を中心に述べてきました。「コンカフェ」なる言葉すら知らなかった人には全く未知の世界なので、正直、興味を持つ持たない以前に「だから結局メイドカフェとどう違うの?」という疑問すらまだ完全には解消できていないと思います。
改めて一言でまとめますと「メイドカフェを含む、なんらかの可愛らしいコスプレ的衣装を着たスタッフが、特定のオタク的趣味を持った客の相手をする」というのがコンカフェの定義なわけですが、本文中でも少し触れたように、今後、メイド要素やコスプレ要素皆無の、ただ単にオタク女子を雇っているだけのカフェやバーもコンカフェ業界に参入してくるので、近い将来必ずコンカフェと関わる日が皆さんにも訪れると予想します。
もしかしたら皆さんが会社帰りに普段通っている、店員さんが可愛いことで有名なあの駅前の立ち飲み屋さん、実はマスターが地下アイドルマニアで、働いてる子も全員地下アイドルの卵だった…なんてことがあるかも知れませんよ。