お酒は好きだが、毎日同じようなバーや居酒屋に通うのではなんとなく味気がない。
あるいは、恋人とのデートコースがマンネリ化してきたので、たまには珍しいお店に連れていきたい。
そんな非日常の刺激を求めているなら、ちょっぴりマニア系のコンセプト酒場などはいかがでしょうか?
深い知識を持っていないと話についていけないほどではないけど、「そのジャンルなんとなく知ってる!」というような趣味で
統一された世界観やスタッフのノリが楽しいお店。いわゆる「ライトオタク層」に最適な、ちょうどいいラインの酒場が
大阪には以外と多いんです!一人客も歓迎、カップルで訪れても忘れられない思い出になりそうな、おすすめの大阪コンセプト酒場を今回は10店舗一挙に紹介したいと思います!
目次
評価項目
入りやすさ
大通りの路面店のような、あまり目立つ場所にあっても隠れ家感が薄く面白味に欠けますが、かといって「入口自体が分からない」「SNSでの合言葉を知っている人だけが入店できる」といったような高い敷居を設けてしまっている店舗だと、興味より不安の方が先立ってしまいます。
知らない人は存在すら知らないけど、いざ訪れる段階になったら比較的迷わずに辿り着けるかどうかを入りやすさの基準にしました。
居心地
特定の趣味をテーマとして掲げている飲食店は、壁にそのジャンルに関するポスターが貼ってあったりカウンターがグッズで埋め尽くされていて視覚的にも楽しめますが、その一方で店内が雑然とし過ぎていて清潔感がない、落ち着いて酒を飲めないといった難点が生じることも多々あります。
経営者の嗜好性はしっかりと店内の雰囲気に反映させつつ、飲食店としての過ごしやすさを保持できているかどうかがこの項目の評価基準となります。
世界観
とことんディープなコンセプトを追求する店舗であれば、マスターの完全なワンマンセンスで店内レイアウトやデザイン、メニュー構成などを決めてもそれに対して着いてきてくれる信奉者が一定数は存在するものですが、今回の「程よくマニアックで楽しい」というレベルだと、やはりそこまで詳しくない人にも分かりやすく伝わるように空気感が調整できているかどうかがポイントです。
スタッフに関しても、お客様への気遣いそっちのけで趣味ばかり語る自分本位の接客になってしまうのは論外ですが、最低限その店のコンセプトに合わせたキャラクターは崩さないようにする必要があるので、そのへんのバランス感覚は特に重視しました。
価格帯
退屈な日常からちょっと外れてみたいという潜在欲求がトリガーとなって足を運ばせるのがコンセプト酒場の存在意義ですので、普段通っている酒場より若干グレードの高い価格帯でも多少は許せるかもしれません。
特にカップルや職場の同僚達と「ネタ」として行くのであれば、珍しい人生体験ができるというのも込みの値段になりますので、コスパのみを求めるべきではないでしょう。
ただ、店側が提供するサービスに応じた値段設定が顧客満足度を左右するのは事実です。
コンセプト特化型だからといって決して背伸びすることなく、世界観に見合った価格に抑える経営努力が実現できているかどうかで評価しました。
その他の魅力
価格や内装、立地など、目に見える範囲で判断できる店舗の良し悪しとは別に、「SNSでの情報更新が速い」「季節によって多彩なイベントを開催している」「店長やスタッフが個性的」など、数値には表れにくい、お客様への心配りや、来て良かったと思える店舗作りを心がけようとする意欲なども当然お店の価値に影響してきますので、それら諸々の要素を一括的に「その他の魅力」として評価することにいたしました。
洞窟居酒屋「GROTTO」
「宗右衛門町に飲食店を出せば100%成功する」とまで言われたバブル最盛期の1990年代前半にオープン。
そこから経済的な激動の波を潜り抜け、約30年間に渡ってミナミの変遷を見守ってきた老舗コンセプト居酒屋です。
洞窟の中をモチーフにした世界観の秘密は壁の材質。
石灰岩のように引っ掻いたらボロボロこぼれるタイプなのかと思いきや、特殊な加工が施してあるので微塵も摩耗することなく開業時の状態に保たれています。
店舗作りに予算をかけることができたバブル期だからこそ実現した過剰な完成度の内装には現代日本を語る上での歴史的資料としての価値すらあります。
心斎橋筋のアーケードと御堂筋を繋ぐ横のラインのど真ん中にある絶好のロケーションでありながら、ノーチャージで意外に庶民的。
ドリンク・フード共に単品の価格設定もカジュアルで、飲むだけの利用もOK。飲み放題コースもあり、カウンター背後にある穴蔵のようなスペースは20人以上のキャパがあるので「洞窟貸し切りパーティー」のようなプランにも適しています。
骨董品居酒屋「成田屋」
大阪有数の観光地である新世界のジャンジャン横丁を抜け、「動物園前一番街商店街」の入口脇にある、一見屋台風のレトロな店構え。
オープン前でも中の様子が分かるほど開放的なレイアウトで、オープンしているのかどうか少しだけ判断しづらい部分もあるのですが、夕方近くになると店内に照明が灯り、おでん鍋から湯気が立ち上がりだすので営業開始のタイミングがすぐに分かります。
店内でまず目につくのが年季の入った壁時計。
どれもバラバラの時刻を指しているのが風情を感じさせます。
使えるのかどうかすら怪しい外国の紙幣が無造作に貼ってあったり、止まった扇風機が客席を睨んでいたりする様子からは、無機質なのになぜかハートフルな温かみが。
メニューはほぼおでん一本勝負。
入口付近で煮込んでいるので、外国人観光客が珍しがって立ち止まることもしばしば。
業務用冷蔵庫に缶ビールや缶チューハイが冷やしてあり、セルフで取り出しキャッシュオンで支払うシステムになっています。
千円もあれば十分に楽しめるでしょう。
駄菓子バー「chat noir」(シャノワール)
宗右衛門町エリアでもかなり心斎橋から遠ざかった深い位置にあり、呼び込み攻撃などを交わしつつ辿り着く必要があるのですが、「chat noir」が入居しているビル自体は非常に落ち着いた上品な雰囲気で、地下へ潜るスロープを進むと左側に見えてくるのが「chat noir」。
介護職の傍ら、飲食店の開業を目指していたというオーナーが2019年の秋にオープンさせたばかりの若い店舗で、訪れる度に新しいお酒が増えていたりするのでお店の歴史を共に歩んでいるという参加意識も高まります。
カウンター背後一面に並んだ駄菓子の棚はまさに壮観。駄菓子屋でよく見かける、透明のポットに入った酢イカや紙カツなどの「串モノ」には特に力を入れており、ボンタンアメは箱ごと取ってOK、「モロッコヨーグル」にもちゃんと木のスプーンが付いてくるという徹底したホスピタリティ。
入店時のチャージ500円(2時間制)に食べ放題が含まれているというのだからコスパは最強。
お酒が苦手な人でも駄菓子とソフトドリンクで懐かしい思い出に浸れる、アットホームな雰囲気です。
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アリスと紫のバー「Amethyst」(アメジスト)
日雇い労働者の街、西成は外国人観光客にとっては「安いホテルが多い」ということで実は人気のスポット。
インバウンド狙いの宿泊施設開業ラッシュに沸く新今宮エリアから南に深く潜り込むと、景色は一転、アパートや一軒家が犇めく素朴な住宅街に。
「Amethyst」があるのはその住宅街のど真ん中。
相当鋭い土地勘を働かせないと発見しにくい立地だが、暗くなると民家と民家の狭間でこの店舗だけ浮き上がって見えるので、各路地の位置関係さえ把握できれば辿り着けるでしょう。
ステンドグラス作家としても活動している女性店主が根っからの「紫」好きであることと、不思議の国のアリスを寵愛しているため、2つの世界観をマリアージュさせた幻想的なバーを立ち上げてみたいということで、あえてディープな西成地区にオープン。
下町が持つ雑草魂のポテンシャルと、紫というカラーが秘める高貴な雰囲気とのギャップを狙った遊び心が功を奏したのか、カラオケ居酒屋ばかりがやたらと多い西成において貴重な「正統派のバー」として人気を集めています。
ノーチャージで単品価格も安く、おつまみとしてプッシュしているチーズの種類も豊富。店主が元々西成でよく飲んでいたので、近隣他店舗との横の繋がりが強いのも魅力です。
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文学バー「リズール」
地元・大阪府出身の芥川賞作家、「玄月氏」がプロデュースする文学バー。長堀交差点と四ツ橋が交差するポイントの北東付近、女性ウケするスタイリッシュなデザインと質の高い料理を提供する大阪ならではの実利主義を兼ね備えた、骨太な飲食店が競合するエリアでしっかりとその存在を主張しており、本格的なバー使いもできるのが特徴です。
ビルの地階ですが、階段の上にペン型の看板が置いてあるので入口はすぐに見つかるはず。
店内の本棚には文学のみならず多彩なジャンルの書籍が隙間なく並んでいて、ちょっとした田舎の図書館クラスには余裕で勝っている蔵書量はそれだけで「圧」を感じます。
文芸雑誌のバックナンバーもほぼ網羅している勢いで、視覚的なボリュームという点においては大阪のコンセプト酒場でもトップでしょう。
手前がテーブル席、奥がカウンターというレイアウトで、カウンターに座る客はマスターと文学談義を交わしたり黙々と読書に耽っていたり、過ごし方は様々。
ノーチャージでお酒の品揃えにも妥協がなく、玄月氏の「酒と文学との高い親和性」を店舗作りに反映させようとする意識が店内の雰囲気に強く醸し出されています。
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ピンク可愛い世界観のカフェ「ピンクカワイイカフェ」
今や外国人観光客に占拠されているといってもいい道頓堀エリア。
その道頓堀の橋の下で一際異彩を放つのが、まるで外国のアイスクリームショップを思わせるカラフルポップな色使いの外観。
いわゆる「裏原宿系ファッション」と呼ばれる、きゃりーぱみゅぱみゅ的なイメージのピンクを基調としたファッションやデザインが好きという人なら、目がチカチカするような奇抜なエントランス気後れすることなくスンナリ入店できるでしょう。
2019年の夏にオープンした当初はやはり観光客をメインターゲットにしたコンセプト飲食店だと思われていましたが、「カワイイ」を愛する日本橋系の地下アイドルやメイドさんの間で噂が広まり、サブカル業界関係者の来店が右肩上がりに急増中。
オプションメニューに「チェキ」もあるので、オタク気質の男性来店者も普通に訪れるとのこと。
「KERA」や「Zipper」系の雑誌に登場するような、プライマリー・カラーを多用するコーディネートの女の子がタイプ!という人であれば、男女問わずハマるに違いありません。
内装のデザインも派手目で、翼の生えたポニーのオブジェが異世界感を強調させます。
メニューは哺乳瓶型の容器に入ったフローズンドリンクをはじめ、どれもインスタ映えするカラフルなものばかりで、一品あたりの値段は安くはないのですが、ノーチャージなので明瞭会計といえます。
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鉄道バー「ジオラマ103」
秋葉原と並ぶサブカルの聖地・日本橋ですが、秋葉原がそうであるように、飲食店に関しては萌え系コンセプトのみが蔓延してしまっている状況。
そんな中、「非萌え系」の趣味を前面に打ち出している数少ないコンセプトバーのひとつである「ジオラマ103」は、日本橋の三大カルチャーである「アイドル・メイド・コスプレ」とは一切縁のない、我が道を行くといった運営スタイルで、関西の鉄道ファンから堅実な支持を得ています。
比較的広い店内には鉄道関係のレアなグッズや書籍が飾られ、駅の構内などで実際に使用されていた案内板など、どうやって入手したのかミステリアスなものも(そういう廃品のバザーがあるようです)。
奥のスペースに設定されているジオラマでは常連客が鉄道模型を走らせており、割合としてはお酒メインの目的よりも「趣味を披露する場」として来店する人が多い印象。
チャージは500円でドリンク及びフードメニューはカジュアルな価格設定。
カウンターの前にも模型の線路が敷かれていて、世界観は徹底しています。
マスターも生粋の鉄道マニアですが基本的には会話好きで、普通の世間話にも気軽に対応してくれるので接客面においてはかなり高評価です。
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鹿肉バー「buttocks」(バトックス)
牛・豚・鶏以外の「ジビエ」と呼ばれる肉料理を提供する店舗が関西でも増えてきましたが、「buttocks」は鹿肉に特化した店舗で、非常に貴重な存在。
また、供給量が少なく仕入れルートも限定されている関係上、値段設定がどうしても高くなりがちですが、buttocksはステーキやシチューなど鹿肉を思う存分堪能できる一品料理でも価格帯を1000円前後に抑えているので、ジビエ料理店にありがちな「肉のボリューム感の弱さ」が解消されています。
マスターは南堀江のレジェンド的な中華料理店「がんばれ!ホウライ」で修行を積んだ経験があり、その名残りからか、鹿肉以外にも麻婆豆腐などのメニューが。
これがまた絶品の味わい。
道頓堀の外れ、相合橋商店街の路地裏という、地元の飲み慣れた人達がハシゴ酒で往来するゾーンにあり、外国人観光客やYouTuberにとっても盲点になっているため、ゆったりとお酒を楽しみたい、というタイプの人からも意外に高く評価されています。
終電過ぎの2時前後まで開いている利便性も強みで、バー的な利用も問題なく、深夜にちょっと顔を出すといった感じで訪れる常連客も多数。
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高校野球マニアが集まる焼肉屋「吉球」
バブル期から続く本格的な高級レストランバーなどが多く、「洗練された大人の社交場」といった感じの鰻谷エリア。
欲望渦巻く宗右衛門町での遊びにも飽きてこの静かな場所で飲み歩いている悪オヤジ、といった図式が成り立つオシャレな色気のある街ですが、この「吉球」はそんな中年男性層のノスタルジーをかき立てる要素が山盛り。
マスターが高校野球ファンということで、店内には高校野球の優勝常連校のユニフォームはもちろん、プロ野球選手の甲子園時代の写真やサイン入りボールなども飾られていて、どの世代の客にも「こんな選手いたなあ」とピンポイントに刺さるグッズで店内が埋め尽くされています。
焼肉屋ですが清潔感のあるレイアウトは家族やカップルでも利用しやすく、私が来店した時は少し年配の夫婦が昔を懐かしみながら高校球児のユニフォームを眺めていました。
全体的な価格帯は鰻谷の標準レベルといったところですが、周辺にある同程度の値段設定の焼肉屋と比べると抜群に肉質が上等で、マスターの肉に対する目利きの良さが光ります。
入口の引き戸から店内の様子がある程度把握できるので、全体的に敷居の高いこのエリアの飲食店にしては入店しやすいのが特徴。
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ガンプラバー「NT-BASE」
オタクの街・日本橋のメインストリートである「でんでんタウン」。
2010年代初頭までは夜8時を過ぎるとゴーストタウンのような静けさで女性が1人で歩くのも抵抗がありましたが、昔ながらの個人経営の電気屋の減少と共に萌え系飲食店の開業ブームが巻き起こり、現在は終電間際まで昼間のように明るく、人通りも賑やか。その影響が追い風となって一般の飲食店も活性化され、でんでんタウンのちょうど中間地点を横切る通りの西側が「王将」やたこ焼き屋が並ぶグルメストリートのような様相に。
「NT-BASE」のマスターは元々モノづくりの街であった日本橋に「趣味の創作活動に没頭できる場所を提供したい」と考えた結果、1階をバー、2階をプラモデル工房というスタイルにして王将の向かい側付近に路面店をオープン。
生のサーバーから注がれる日替わりのクラフトビールや手作りメンチカツなど飲食店としてのクオリティーを重視したのがこのエリアの波長とマッチしたのか、日本橋でも屈指の本格的なバーとして認知されるようになりました。
アニメやプラモの話をしながら酒を楽しみたい客層と、2階でじっくりとプラモを製作したい客層が明確に分かれており、両方を取り込める受け皿の広さも魅力です。
お昼から営業しているので早い時間帯から飲むことも可能、定食メニューも用意。クラフトビールだけ少々お値段が張りますがあとはリーズナブルです。
元地下アイドルやネームバリューのあるサブカル系女子がゲスト出勤することも。
道路沿いでなおかつ巨大なフィギュアが飾ってあるので入口を見失うことはまずありません。
席数がそれほど多くないので、週末などは空き状況を確認してから訪れたほうが無難かもしれません。
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まとめ
マニアックな知識を必要とせず、カップルや友達同士でも気軽に楽しめるコンセプト系酒場を10軒紹介いたしました。
そのお店のコンセプトやマスターの趣味に関して全く興味がなくても、飲食店として満足できるレベルのお店を中心にリストアップしてみましたが、マスターとの会話でその趣味の面白さに気付かされ、次第に自分自身もオタクになってしまった、という人も大勢います。
軽い気持ちで訪れても周囲から浮いてしまうというようなことは全くありませんので、まずはネタ的なノリで気楽に入店してみてはいかがでしょうか。