「酒場は出会いの場」とよく言われます。それは決して恋愛的な話だけではありません。
自分と同じ価値観を持った人間と意気投合し、一生涯の友人になる可能性もあれば、酒場で知り合った仲間達と共に起業するなんていうケースも最近ではよく見かけます。
特に「マニアックな趣味にハマってるけど、周囲に話し相手がいない…」という人には、ピンポイントで同じ趣味を持った仲間が集まる、オタク系のコンセプトバーがオススメです。
勇気を出して扉を開ければ、きっとあなたに負けず劣らずその趣味に精通した人が歓迎してくれることでしょう。
今回の記事では、「え!こんなピンポイントな趣味に特化したお店があったの?!」というような、珍しいコンセプトの店舗を特集してみました。
特に関西は関東と比べてコンセプト系飲食店の絶対数そのものが少ないので、今回の記事は情報的価値としてもかなり貴重だと思います!
目次
評価項目
入りやすさ
ガールズバーやメイドカフェと違い、「非萌え」の一般的なコンセプト系飲食店では、少なくとも「多額の料金を請求される」類のトラブルは皆無に等しいといっていいでしょう。
その代わり、空気感や内輪ノリを大切にている店舗が多く、共通の趣味を持っている人間以外の入店をあまり歓迎しないような態度をとられることがあるので、入店するにはそれなりの覚悟が必要です。
今回紹介する店舗に関しては、まだそこまで排他的な雰囲気ではなく、最悪、その店がコンセプトとして掲げている趣味に関してあまり知らなくても、普通に飲食店として楽しく利用できる店舗を中心に選んだつもりではありますが、その中でも「場所の分かりやすさ」や「営業情報の入手のしやすさ」によって気軽に入店できるかどうかは多少の差が出てくると思われますので、そのへんで点数を調整させていただきました。
居心地
今回の記事に関しては「お店のコンセプトと自分の趣味が一致する」という前提での入店を想定してますので、店内のノリに全くついていけずに居心地の悪さを感じるようなことはあまりないと思いますが、たとえばマスターが接客もせずにずっと好きなアーティストのDVDを眺めていたりするような感じの店だとやはり長居する気が失せるでしょうし、そのあたりの「精神的な居心地」も含め、単純に店舗内のレイアウトや内装、清潔感、各客席の間隔など「物理的な居心地」との両面において総合的な居心地の良さを判断してみました。
世界観
安易にマニアックな客を集めて稼ごうとする飲食店でありがちなのが、アニメのフィギュアをカウンターに何個か置いてるだけで「アニメバー」と名乗るようなパターン。
逆に、マスターがそのジャンルに詳しすぎるが故に店内にはあえて趣味を強調するグッズ等は置いてない、というポリシーで経営している場合もあります。
ただ、せっかくお金を払って外食に行くのですから、「こんなマニアックなお店に行った」という記念に写真の一枚も撮りたくなるのが人情ですし、店内の雰囲気がそのジャンルに関する世界観で統一されているにこしたことはありません。
ですので、この「世界観」に関しては、マスターの知識の深さよりも、視覚的な要素としていかにマスターの趣味が反映されているかを重視しました。
価格帯
マニアックなコンセプトの店舗ほど価格帯は高くなる傾向があります。
絶対的な集客数よりも「来たい人だけ来てほしい」というスタンスでの経営になるため、1人当たりの客単価を上げていかないと売上が確保できないという事情があるのでしょう。
ただ、ギリギリの経営努力でリーズナブルな価格設定を維持している店舗に関しては当然高く評価したいですし、また、明らかに「個人的な趣味でお店をやっている」と割り切って最初から赤字覚悟の価格設定にしている店舗もあります。
「安い理由」はお店により様々ですが、利用する私達としてはとにかく安く楽しめるというのがお店選びの最重要ポイントです。
その他の魅力
価格や内装、立地など、目に見える範囲で判断できる店舗の良し悪しとは別に、「SNSでの情報更新が速い」「季節によって多彩なイベントを開催している」「店長やスタッフが個性的」など、数値には表れにくい、お客様への気遣いや、楽しい店作りを心がけようとする意欲なども当然お店の価値に影響してきますので、それら諸々の要素を一括的に「その他の魅力」として評価することにいたしました。
邦ロックバー「RocknRolla」(ロックンローラ)
個性的なカフェやバーが密集している東心斎橋の周防町~鰻谷エリアでも特に癖の強いコンセプトの店舗が集まっている「ふぁみーゆ東心斎橋Ⅴ」。
発達障害バー、競馬バー、日本酒バーなど多種多様なジャンルのバーが入居しているビルとして有名ですが、この「RocknRolla」は同ビル内でも先駆けて邦ロック好きが集まるバーを開業した、「マニアック店の先輩格」。
店内の壁は関西各地で開催された邦ロックライブのポスターや、来店したバンドのサインで埋め尽くされ、眺めているだけでも退屈しない。
邦ロックの物販といえば「タオル」と「リストバンド」だが、筆者が初来店した時はカウンター背後にマキシマムザホルモンのタオルを掲示しており、マスターの手首にもホルモンのリストバンドが。
マスターの邦ロック愛が強く伝わってきます。
近隣に「心斎橋JANUS」などのライブハウスがあり、カフェ利用をしてくれたお客様の手荷物を預かってくれるクロークも実施。
ライブ後にはマスターと感想を語り合えるのでまさに一石二鳥です。
邦ロック好きは未成年も多いため、お酒のメニューだけでなくソフトドリンクのバリエーションも豊富。
最近ではラテアートを修得し、各バンドのロゴやイメージアイコンをラテアートにしてくれるサービスもインスタ映えすると好評です。
全体的な価格帯もリーズナブルで、歓楽街の喧騒から少し落ち着いた場所にありますのでバー初心者でも比較的入りやすい立地です。
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e-sportsバー「LOTUS」(ロータス)
爆買い目当てのインバウンド需要で賑わう大阪・道頓堀から大通りを西に渡った飲み屋街に位置する、
騒がしすぎず寂しすぎず丁度いい立地で入店しやすいe-sportsバー。
ゲーム会社側からの規制により家庭用ゲーム機で遊ばせるゲームバーが一斉に業種替えを余儀なくされた時期以降に新規オープンしたため、規制の影響を受けず、最初から「e-sports観戦」「ボードゲーム」の二本柱をコンセプトとして運営しているのが特徴です。
e-sports好きが集まる店舗には、ゲーミングマシンが店内に設置してあって実際にプレイするタイプと、プロゲーマーの試合をスクリーン等で観戦するタイプの2種類がありますが、ロータスは後者。
どちらかといえば「スポーツバー」に近いノリで、お酒を飲みながら楽しめるという点ではバーの要素が強めと言えるでしょう。
店舗面積が広く、テーブルレイアウトにも柔軟性があるので、ゲーム・サブカル関連の貸切イベントなども相談により可能。
ボードゲームの種類も豊富で、混雑時でなければ初心者向けにルールをレクチャーしてくれるので、未経験のタイトルでもすぐ遊べます。
一般的なバーと比較しても価格帯はリーズナブル。飲食店としての意識がしっかりしているのでむしろコンセプト系バーであることを忘れてしまうほど。
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バックギャモンバー「Savepoint」(セーブポイント)
Jリーグファンにはお馴染みの長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)。最寄り駅である長居周辺はサッカーバーやダーツバーなど若者向けの飲食店と昔ながらの飲み屋が賑やかに混在していて飲む場所には事欠きません。
「Savepoint」は長居公園通りと呼ばれる駅前の大通りに面したビルの2階にあり、交通量自体は多い立地ですが、ビルのエントランスがオフィスビルのような雰囲気で一見飲食店が入ってるような感じには見えず、それが絶妙な隠れ家感を醸し出しています。
マスターは日本バックギャモン協会公認インストラクターの資格を持っており、店舗自体もバックギャモン公式大会の会場として認定されているようです。
バックギャモン台の他にもダーツマシンとゲーセン仕様のパチスロ機などが置いてあり、遊び方のバリエーションが幅広いのも魅力。
手作りフードにも力を入れていて、筆者が来店した時期は匂い控え目の「コリアンダー餃子」がピックアップメニューでした。価格帯も梅田や難波より一段階リーズナブルで、電車に乗っても通う価値あり。
バックギャモンを知らないけど興味があるという人には、混雑時でなければ基本ルールから説明してくれます。将棋や囲碁と違ってダイスを使用するため
僅かながら運の要素も勝敗を左右し、初心者でもプロに勝てる可能性があるので一度ハマれば抜け出せなくなること確実です。
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ゾンビバー「リボル・バー」
複数の路線が重なった中継地点として機能している京橋駅。会社帰りのサラリーマン層を狙った激安大衆居酒屋が立ち並ぶ駅前商店街を奥の方に進むと、徐々に道幅が広くなり、どことなく昔ながらの長閑な下町情緒が色濃くなってきます。
人口密度が若干薄まったあたりで路地裏に曲がり、数軒先にあるスナックビルの1階には既にゾンビっぽいダークなデザインの看板が。
表通りではないものの、方角さえ迷わなければ非常に見つけやすい立地です。2階に上ると椅子に座ったゾンビの人形がお出迎え。店内は黒地に赤のスプラッター系デザインで統一されており、いかにも血の匂いが漂ってきそうな雰囲気ですが、カウンター・テーブルともにすっきりとレイアウトされていて思ったより清潔感があります。
マスターは根っからのゾンビ好きで、ゾンビが登場する映画はほとんどチェック済み。
慣れ過ぎてしまったのか、多少のグロい写真を観ても眉毛ひとつ動かしません(笑)。
ネット上では20:30オープンの不定休となっていますが、マスターの趣味的な要素が強いとはいえ、決して気まぐれで開けているわけではなく、接客姿勢も丁寧で気遣いに溢れています。
まさかのノーチャージというのも魅力的で、筆者が初来店の時は、想像していた予算の半分程度で飲むことができました。
アイマスバー「768Production」(ナンバプロダクション)
アイドル育成ゲームの最高峰として2005年の誕生以来根強い人気を維持し続けている、「THE IDOLM@STER」(通称アイマス)のファンが集うバー。
宗右衛門町と鰻谷を区切るヨーロッパ通り(周防町通り)沿い、大型テナントビルの地下にあり、エントランスも開放的なのでビルの場所さえ分かれば入りやすいと言えます。
ただ、ドアの入り口に堂々とアイマスのイラストが貼られているので、最初は入店するのに少し勇気が必要かも。
店内はアイマスのポスターやグッズで埋め尽くされ、隅から隅までアイマス一色の世界観。
今までに発売された商品が全てコンプリートされているのではないかと思うほどの徹底ぶりで、アイマスを知らない人にとってはどのようにして過ごせばいいのかちょっと戸惑うかも知れません。
オリジナルカクテルも全てアイマスの曲名などにちなんでいて、これもアイマスを知らなければ呪文のように見えてしまうのですが、甘さやアルコール度数などが星の数で明記されているので、自分の好みに合った味を探すことができます。
お客様がプロデューサーという設定になっているようで、誰かが帰る時にはマスターや常連客から「お疲れ様です!」の掛け声が。
みんなで協力してお店を盛り上げていこうという参加意識の高さはコンセプト系飲食店ならでは。
料金システムはチャージ500円、アルコール類は大体どれも800円前後のようです。
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プロレスバー「カウント2.99」
中国人の爆買い需要で好調の波に乗る道頓堀ですが、メインストリートを堺筋に抜ける手前の「相合橋商店街」に足を踏み入れると少し癖の強い個人経営の飲み屋が目立ち、ほんの10年ほど前までは遊び方に気をつけないとトラブルに巻き込まれやすいエリアでした。
最近は中国人観光客の影響で人通り自体が増えたため、むしろ治安の良さは大阪市内でも上位に。
カウント2.99はその相合橋商店街の真ん中あたりを曲がり、路地中央付近のビル3階。そのまま真っすぐ行くと千日前のアーケードに出るので位置関係は把握しやすいと思われます。
店内にはプロレスグッズや過去のプロレス雑誌、ポスター類などが飾られていますが、常連客の多くは実際にプロレスを生で観戦する「現場派」の人が多いようで、関西の各会場での試合の開催情報なども店内に掲示されています。
物腰柔らかく落ち着いた感じのマスターはもとより、プロレス談義で大騒ぎするような客も皆無で、どちらかというとバーとしてお酒を楽しみながらプロレスを静かに語り合うようなイメージです。
価格帯はリーズナブルですが、大きな試合がある週末などは会場帰りのファンが集まり混雑する場合もたまにあるようなので、あまり一杯で長時間滞在しない方が無難です。
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ファンクミュージックバー「ゼットばァー」
西成区といえば元々は日雇い労働者の街でしたが、今では怪しい激安酒場をYouTuberが探索しているイメージがすっかり定着してしまいました。ただ、西成区そのものは面積も広く、一部のエリアを除けばごく普通の住宅街。
ライブハウスが密集している難波に近いということもあり、ミュージシャンの卵などが一人暮らしするには最適。
そんな地元に住む音楽好きからも愛されているのが「ゼットばァー」。
鶴見橋商店街の中に位置しており、夜になると周辺の八百屋やブティックが閉まる中、ポツンと日付が変わるまで営業しているのですぐに発見できます。
店内に設置されたDJテーブルで流されるのはマスターの好きな70年代洋楽が中心。西成の安アパートに住みながら夢を追いかけるDJ修行中の若者達はもちろんのこと、懐かしいメロディーに吸い寄せられるように入店してくる高齢者も入り混じって毎晩熱い音楽トークが変わらせています。
入口には鉄板焼きの設備があり、バーで鉄板メニューが注文できるというのが西成ならでは。
早い時間は買い物帰りの主婦が自転車に乗ったままお好み焼きをテイクアウトする光景も。
メジャーリーグバー「Ball Park Bar」(ボールパークバー)
宗右衛門町の中心部にある雑居ビルの2階奥に店舗を構えており、MLBの球団ロゴなどをあしらったデザインの派手な看板ですぐに「メジャーリーグファンの店」と分かります。
マスターの本職はプロのイラストレーター。野球に詳しいという長所を生かし、数々の野球関連書籍の表紙レイアウトや挿絵を担当。
最近では元ジャイアンツで「代走のスペシャリスト」として活躍した、鈴木尚広さん監修の走塁技術本の表紙デザインなどを手がけたとのこと。
仕事でアメリカを訪れた際、現地で試合を観戦したのがきっかけでMLBの魅力に憑りつかれたマスターは豊富な知識もさることながら、仕事で培ったセンスを店舗の世界観作りにも応用させていて、コースターが芝生になっていたり、おつまみの入れ物が野球のヘルメットだったりと、ディテールにこだわった演出もマニア心を揺さぶります。
ここ数年で急激に大ブームとなったアメリカのIPAクラフトビールをいち早くメニューに取り入れたのも先見の明で、まるで本場のバーで飲んでいるような気分にさせてくれること間違いなしです。
価格帯は通常のショットバーと同程度だが、それでも宗右衛門町の平均よりはリーズナブル。
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クラシック音楽バー「ココルーム」
「クラシック音楽マニアが集まる店」を謳い文句にしているが、ノーチャージで1杯あたりの値段も安く、ワンコインでクラシック音楽の壮麗な旋律に包まれながら過ごせるのが魅力。
西成でも最強にディープな山王地区の「動物園前一番街商店街」を北へ進むと、新世界方面への出口寄りの位置にあり、観光客・地元の酒好き・冒険心旺盛なYouTuberという三種のエートスが交錯する地点にして、なおかつ西成ブームになる前の穏やかな下町感も残しているのがこの付近の特徴。
店内の至る場所に大量のLP盤が無造作に収蔵され、一見雑駁としたレイアウトですが、カウンターは広々としていて意外に居心地は快適。
正面奥、畳が敷かれた一段高いスペースに鎮座しているレコードプレーヤーからはクラシックの名曲が流れ、アルバムをチェンジするたびにマスターが「次はこの指揮者によるバッハの交響曲何番です」と軽い説明を添えてくれるので、仮にクラシックを全く知らない初心者でも勉強のきっかけを与えてくれます。
クラシック関連の書籍も自由に読めるので、「お酒の飲める図書館」のような使い方もありかもしれません。
主に金・土・日の週末メインでしかオープンしていないのが残念ですが、営業中はクラシック愛好家達の憩いの場となっています。
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アメコミバー「CROSSOVER」(クロスオーバー)
道頓堀の裏側、ドン・キホーテが2店舗あり宗右衛門町で最も中国人観光客の往来が多い大通り沿いのビル7階にあります。
土曜日の深夜などはラッシュアワーのように中国人が押し合いながら歩いているのですが、「CROSSOVER」の店舗内は別世界のように静かでまったりとした雰囲気。
壁に埋め込まれた本棚一面にぎっしりと並んでいるアメリカンコミックはほぼ全て英語の原書で、店内に置いてある分だけでも総額で高級自動車が一台買えるほどの値段だとか。
ボードゲームで遊べるカフェやバーが増えている昨今、CROSSOVERはアメコミと共にこれまた英語版、現地から直輸入のボードゲームが置いてあり、マスターが元々所有している分もあるとは言え、お店としての世界観を確立させるために投資を惜しまないという心意気が感じられます。
価格帯は宗右衛門町にしてはかなり安く設定されており、早い時間帯などはカフェ的なノリで訪れる人も多いようです。
ビルのエレベーターが6階までしか止まらないため、7階へは階段で行かなければならず、注意が必要。
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まとめ
ディープな趣味を持った仲間が集う、関西のコンセプト系飲食店を10軒紹介しましたが、皆さんが興味のあるジャンルに近いコンセプトの店舗はありましたでしょうか?
実益を求める関西人はどうしても「アニメ好きのためのメイドバー」「ホラーをテーマにしたメイドカフェ」など、萌え要素と結び付けてビジネス展開していく飲食店じゃないと売上的にも成功しない、という風潮があるのですが、ストイックに純粋な趣味としてコンセプトを追求し続ける店舗にはぜひとも頑張って欲しいと思いますので、皆さんも機会があればぜひ足を運んでみていただければ幸いです。